お風呂の頑固なカビ。ゴシゴシ擦るとどうなる?

こまめに掃除をしていても、いつの間にか発生するお風呂のカビ。特に気温と湿度が高まる梅雨は、カビの繁殖が活発になるシーズンです。カビが生まれるメカニズムと対策を、カビの専門家、浜田信夫さんにうかがいました。

今回お話をうかがった方

浜田信夫さん

農学博士。大阪市立自然史博物館外来研究員。京都大学薬学部卒業、同大大学院農学研究科博士課程修了。大阪市立環境科学研究所へ。住環境のカビについて研究し、住宅、エアコン、洗濯機などのカビの生態を解明。2012年より現職。長年にわたり、食品などに生えるカビについて市民からの相談も受けている。著書に『カビの取扱説明書』(角川ソフィア文庫)など。

カビは常に家の中に浮遊している!?

家の中でカビが浮遊している様子

 

床や天井、タイルのくぼみなどに発生するお風呂のカビ。時間をかけて取り除いたつもりでも、繰り返しカビが発生して頭を悩ませている方もいることでしょう。そもそも何もなかったはずのところに、なぜカビが発生するのでしょうか。

浜田さん「カビはキノコと同じ菌類の仲間で、生き物です。胞子と呼ばれる細胞が多くできることで増えてきます。胞子は非常に小さく、人間や物に付着したり、窓から入ってきたりすることで野外から家の中へと運ばれて、常に部屋の空気中に漂っています

この胞子からできた菌糸が伸びると、それが網目状になり、人間の目に見えるほど大きくなります。これがカビの正体です。胞子は、『水分』『湿度』『栄養(ホコリやアカなど)』の3つの条件が揃うと大きくなります。つまり、それらの条件が揃っているお風呂はカビが繁殖するのに最適な環境だと言えます」

 

お風呂に潜むカビの種類は?

黒カビと赤カビのイメージ

 

浜田さんによると、お風呂に発生する主なカビは2種類。ポツポツと斑点状に繁殖する「黒カビ」とぬめりけがあるピンク色の汚れ「赤カビ」です。

浜田さん「湿気の多い水まわりを好む黒カビは、浴槽やシャワーから出る湯気が天井に触れて結露することで発生することが多いです。そのため、天井や壁の上部を中心に繁殖する傾向があります。

一方、通称、赤カビと言われるピンク色の汚れは、実はカビではなく酵母菌の一種です。浴槽や蛇口まわりなど水の溜まるところに発生し、栄養を多く摂るとピンク色が濃くなります。赤カビを放置すると黒カビの発生源にもつながるため、『掃除不足でカビの栄養が溜まっていますよ』というシグナルと思ってください」

 

とにかく浴室の換気をすることが大切

浴室を換気している様子

 

では、毎日使うだけで「水分」「湿度」「栄養」が溜まっていくお風呂でカビを発生させないために、どんなことを心がければいいのでしょうか。浜田さんは「浴室を乾いた状態に維持することがもっとも大切」だと言います。

浜田さん「カビが好む環境にしないために必要なのは、溜まった湿気を逃がすこと。まずは毎日、浴室乾燥機で室内を乾燥させることを習慣にしましょう。夏なら30分、冬なら1時間程度の換気をすれば、床までしっかり乾きます。

また、生えてしまったカビを死滅させるには、アルコールや50℃のお湯をかけるのがいいでしょう。表面のカビは薬剤による拭き取りで取り除くことができますが、壁や床などの内部まで侵入したカビは、十分な浸透時間を置くことが必要です。ちなみに、拭き取っても黒色が残っているのは、メラニン色素を含むカビの死骸が残っているから。死骸が残っているとまたカビの栄養源となり再発生するためしっかり取り除くことが重要です。

特にしつこい黒カビには、重曹(炭酸水素ナトリウム)や塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)など、漂白作用のとりわけ強い洗剤が有効。洗剤を付けて時間が経ったら、こすらずにシャワーで洗い流しましょう。こするとカビが奥に入り込み、落としにくくなってしまうのでNGです

お風呂は毎日の疲れを取るための大切な場所。ジメジメした季節もカビに煩わされることがないよう、日ごろからお風呂の手入れを心がけましょう。

この記事の内容は2024年6月19日時点での情報です。