愛犬と暮らしていると、お散歩中に不意に立ち止まって首をかしげたり、首をかしげながらこちらをじっと見つめてきたりすることはありませんか？ 犬が行うこのしぐさの意味とは一体何なのでしょうか。犬の行動に詳しい、獣医師の椎木亜都子さんに教えてもらいました。
今回お話をうかがった方
椎木亜都子さん
獣医師。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。東京大学附属動物医療センターにて、犬猫の問題行動治療を約5年間行う。現在は、往診専門の「ペット問題行動クリニックBLISS」を立ち上げ、ペットと飼い主双方の気持ちに寄り添う行動治療に取り組んでいる。
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犬が首をかしげるのは“集中”しているサイン！
犬が首をかしげるしぐさは、「何かに集中しているサイン」だと椎木さんは言います。
椎木さん「聞いたことのないような音や、初めて目にするものに、『なんだろう？』と意識を集中させているんです。それを邪魔しないように、飼い主さんはそっと見守ってあげるといいでしょう。
また、初めての環境に集中している以外にも、飼い主さんの声かけに対して首をかしげる場合は『何を言っているのかな』と考えているのかもしれません。そんなときは犬とのコミュニケーションのチャンス。飼い主側から伝えたいことがあれば、積極的に話しかけてみてもいいですね」
犬が上目づかいでこちらを見つめ、首をかしげるさまは非常に愛らしいもの。中には“狙って”やっている子もいるようです。
椎木さん「首をかしげるたびに飼い主さんが『かわいい！』と喜ぶことを覚えていて、集中するタイミングでなくても、飼い主を喜ばせようと首をかしげる子もいます。犬は飼い主の反応をとてもよく学習しているんですよ」
実は重大な病気が隠れている可能性も……？
一方で、首をかしげるしぐさが体調不良のサインである可能性もあるので、注意が必要です。
椎木さん「まず予想されるのは外耳炎など、耳の病気です。痒みや痛みなどの違和感を紛らわそうと、首を左右に動かしていることもあるでしょう。脳や神経系の病気によってふらつきが生じ、体をまっすぐにできないことも考えられます」
病気かどうかは、どうすれば見分けることができるのでしょうか。
椎木さん「例えば耳の病気の場合、首をかしげるだけでなく、耳から今まで感じなかったニオイがする、耳を触ろうとすると痛がったり嫌がったりする、耳を掻きむしっている……など、いつもと違った様子を見せることがあります。
とはいえ、『こんな行動をとる＝病気』と決まっているわけではありません。逆もまたしかりで、特定の行動がないから病気ではない、と言い切ることもできません。安易に自己判断せず、違和感があれば迷わず動物病院に相談しましょう」
犬のしぐさにもっと注目してみよう！
椎木さんによると、首をかしげる以外にも、犬にはさまざまなボディランゲージが備わっているのだそうです。
椎木さん「たとえば、地面のにおいを嗅いだり、目を逸らしたり、その場に伏せたりといった『カーミングシグナル』と呼ばれる動作があります。これは犬が不安を感じたとき、興奮しているときなどに、気持ちを落ち着かせるための動作と考えられています。他の犬と出会ったときに『敵意はないよ』と伝えたり、相手をなだめたりする効果もあるようです」
犬は体全体を使って、とてもバラエティ豊かな感情を伝えてくれます。ただ、それを正確にキャッチするために意識しておくべきことがあるとのこと。
椎木さん「先に述べたとおり、ひとつのしぐさだけで犬のサインを決めつけるのではなく、前後のできごとを把握したうえで、俯瞰的に判断することが大切だと思います。犬のサインを理解できるようになれば、犬との暮らしはもっと楽しくなるはずですよ！」
犬のしぐさに注目し、その思いを受け取ることで、“家族の時間”はいっそう濃密なものになることでしょう。犬が発するサインを見逃さないよう、これまで以上に彼らの行動をチェックしてみてください。
この記事の内容は2024年11月13日時点での情報です。
