この冬に実践したい、静電気を溜めない2つのコツとは?

本格的な冬の訪れとともに、注意が必要になる静電気の被害。この時期、ドアノブなどに触れるのが怖いという人も多いのではないでしょうか。そこで知っておきたいのが、体に静電気を溜めないコツ。服の素材選びなど、ちょっとした工夫で静電気を溜めにくくしたり、溜まった静電気を逃がしやすくしたりできるといいます。専門家に詳しい話をうかがいました。

今回お話をうかがった方

山野芳昭さん

一般社団法人静電気学会静電気基礎研究委員会委員長。工学博士(東京工業大学)。2016年千葉大学名誉教授。静電気研究の第一人者で、NHKなど各種メディアにて静電気の対策などを解説。

 

そもそも静電気とは?

静電気対策について知る前に、まず気になるのが「静電気」の正体でしょう。山野さんによれば、人間の体を含むすべての物質が持つプラスとマイナスの電気が、静電気に関係していると言います。

山野さん「通常、人間の体に溜まっているプラスとマイナスの電気の量はバランスが取れています。しかし、なんらかの原因により、溜まったプラスとマイナスの電気の量に差が生じてしまう場合があります。このとき、金属製のドアノブのように電気を受けとりやすい物質に近づくと、再びバランスを取り戻すため、体の中から余分なプラスまたはマイナスの電気が放電されます。この現象が、一般的に『静電気』と呼ばれるものです」

静電気発生のメカニズム

 

人に溜まる静電気は、多い場合にはなんと数万ボルトに達することもあるのだとか。ただし、人体からの静電気放電それ自体はエネルギーが小さく、なおかつ放電が発生している時間は100万分の1秒以下と短いため、痛みを感じることはあっても、致命傷になる可能性は極めて低いのだそうです。

 

「静電気が溜まりやすい人」っているの?

山野さんの説明にもあるように、静電気とは体が持つ電気のバランスが崩れることにより起こる現象のこと。つまり、体が持つ電気のバランスが崩れていると、静電気の被害に遭いやすいと考えられるわけです。

山野さん「いわゆる『静電気が溜まりやすい人』とは、プラスまたはマイナスの電気を余計に帯びるような行動をとりがちな人と言い換えることもできるでしょう。また、体に溜まった電気を上手に逃がすことが できない人は、静電気の被害に遭いやすいと言えます。逆に言えば、体が持つ電気のバランスを崩さない工夫と、溜まった電気を穏やかに放電する工夫をすれば、静電気の被害に遭いにくくなるでしょう」

 

静電気を溜めないコツは服の素材選びから!

ところで、体に電気を溜めないコツはあるのでしょうか? 山野さんによれば、着る服の素材の組み合わせに注意することで、静電気による被害を軽減することができると言います。

山野さん「冬になると重ね着をする人が多くなります。重ね着をすると、服の生地同士が擦れてプラスまたはマイナスの電気が発生し、体に溜まっていきます。これが、冬に静電気の被害が起こる原因のひとつになっているのです」

しかし、寒い季節にはどうしても重ね着をしてしまうもの。そこで重要になるのが、擦れ合う生地の素材なのだそうです。

山野さん「たとえばアクリルならマイナス、ナイロンならプラスというように、服の素材ごとに帯びやすい電気の種類が異なります。静電気の被害を軽減するためには、プラスとプラス、マイナスとマイナスというように、同じ電気を帯びやすい素材を選ぶとよいでしょう。また、綿や麻といった天然の素材は化学繊維の素材に比べ電気を帯びにくいため、冬の装いの重ね着に加える素材としておすすめです」

衣服の素材の帯電列

 

体に溜まった電気を穏やかに逃がすコツは水分にあり!

冬の時期に静電気の被害に遭いやすいのは、空気が乾燥するため、物質が電気を帯びやすくなることが主な原因とのこと。山野さんによれば、体に溜まった電気を穏やかにさせる、つまり穏やかに逃がすためには、水分が重要なのだといいます。

山野さん体に溜まった電気を穏やかに逃がすコツとして、体の表面や空気中の水分を多く保っておくことが重要です。乾燥を防ぐ意味では小さなスプレーボトルに水を入れて空気中にスプレーしたり、手に吹きかけたりして使うだけでも十分な効果が期待できます。また、加湿器を使って部屋の空気を加湿したり保湿クリームで肌が乾燥しないようにしたりするのもおすすめです。ちなみに、綿や麻といった生地は汗を吸いやすいため、体に溜まった電気を穏やかに逃がす効果も期待できます

放電の仕方

 

不安なときの一手間!静電気でバチッとならない工夫

いくつかのコツを教えてもらいましたが、それでもドアを開ける前は不安なもの。そこで最後に、ドアノブに触れる直前に試すべき工夫を聞きました。

山野さん「ドアノブに触れる場合は、指先ではなく面積が大きい手のひらで。木や、湿ったタオルなどに手を触れて穏やかに溜まった電気を逃がした後なら、さらにリスクを減らせます。また、ドア板や壁に手のひらを付けてからドアノブに触れるのも、ある程度効果があります」

ドアノブの静電気の対処法

 

服の素材を見直す、保湿や湿度を意識する、ドアノブは放電できる素材に触れてから手のひらで回すなど、「バチッ」をやわらげるコツを紹介しました。ぜひこの冬、実践してみてください。

この記事の内容は2024年12月11日時点での情報です。