数年前に買ったマスクはいつまで使うことができる?

コロナ禍にマスクを大量購入したものの、その後はたまにしか使っていない…そんな人もいるのでは。それらのマスクはいつまで使えるのでしょうか。また、適切な保管場所はあるのでしょうか。ウイルスの専門家である西村秀一さんに聞きました。

今回お話をうかがった方

西村秀一さん

国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長。1955年山形県生まれ。専門は呼吸器系ウイルス感染症(特にインフルエンザ)。呼吸器系ウイルス感染症研究の日本における中心人物のひとり。著書に『もうだまされない新型コロナの大誤解』(幻冬舎)など。

 

昔のマスクで注意したい「ゴムの張り」

不織布マスク

画像:iStock.com/Gam1983

 

私たちがよく使う不織布のマスクに「使用期限」はあるのでしょうか。いくつかのマスクメーカーでは、自社のホームページなどで「未開封で3〜5年」と明記しているケースが見られます。

西村さん「不織布や布(ガーゼ)、ウレタンなどマスクの素材はさまざまですが、いずれの場合も未開封の状態で室内に保管していれば、使用期限を過ぎても性能が大きく劣化する可能性は低いと考えられるためそこまで気にする必要はないでしょう(※1)

西村さんによれば、マスクの使用期限はそれほど気にする必要はないとのことですが、長期保管されたマスクを使う際には、必ず「ゴムの張り」を確認してほしいとのこと。

西村さんゴムが経年劣化をしていると、マスクを着けた時に緩くなり、隙間ができてしまいます。その場合は新しいマスクに変えることをおすすめします。使用できるかどうかはゴムの部分を見て判断すると良いでしょう

ちなみに、メーカーのホームページには「高温多湿や直射日光の当たる場所は避けるように」といった注意書きがありますが、マスクの保管場所としてはどのようなところが良いのでしょうか。

西村さん保管場所もあまり気にしすぎる必要はないと思います。確かに高温多湿や直射日光の当たる場所は望ましくはないですが、屋内空間であればそのような環境にないかと思いますので、ほとんど大丈夫でしょう

※1:保管状況によって変わってくるため、湿度の高い環境で長期保管されていたマスクや開封後のマスクなどの場合は、メーカーの使用期限を目途にご使用ください。

 

目的に応じたマスクの使い方が大切

使用期限や保管場所よりも、マスクの正しい使い方を知っておくことが大切と西村さんは言います。たとえば、マスクには不織布や布(ガーゼ)、ウレタンなど、いくつかの種類がありますが、それらの構造の“違い”を知って、目的に合わせて選ぶようにとアドバイスします。

西村さん「まず不織布マスクについては、内部に濾過布が何層も重なっていて、その繊維の間に発生する静電気でウイルスを食い止めます。大きな粒子は濾過層自体でブロックしますが、本当に厄介な小さなサイズの粒子は静電気の働きで吸着しているのです」

一方、布マスクは静電気を発生する構造ではなく、布自体で止めるのみのため、小さな粒子をブロックする機能は弱いとのこと。さらにウレタンは、大きさに関わらず粒子を防御する機能がほとんどないようです。西村さんはこれらを踏まえて、目的に応じた使い分けをすると効果的だと言います。

西村さん「外から入るウイルスは粒子の小さいものが多いため、感染防御が目的なら不織布マスクを使いましょう。一方、布マスクは外からの防御機能こそ弱いですが、自分の持つウイルスを周りに広めない目的なら有効。体内から出るウイルスは粒子が大きく布自体でブロックできるためです。

ちなみに、不織布マスクの特徴である小さな粒子をブロックする機能は、同じマスクを累計で8時間ほど着けると1〜2割は効果が落ちてきます。とはいえこれもわずかな変化なので、それほど意識する必要はないでしょう」

マスクの種類ごとの特徴

 

鼻と頬の周りにできる“隙間”に要注意!

種類ごとの使い分けも大事ですが、いざマスクを着けるときに正しく装着できていないと、効果が減少してしまいます。たとえば不織布マスクの場合、プリーツが下向きになっている方が外側ですが、意外と逆にしてしまっている人もいるのでは。西村さんはマスクを着ける際に一番気を付けたいポイントは“隙間”と話します。

西村さん大切なのは隙間を作らないことです。そのためにもゴムの劣化に注意しましょう。特に気をつけたいのは鼻の両サイドと頬の周辺です。前者については、マスクを着けた人を上から覗くと、意外に隙間があることに気づくでしょう。また、喋ったり動いたりするたびにマスクはずれて隙間ができるので、細かく位置を確認するのが大切です。人混みなどの感染しやすい場所に入った際は、一時的に手でマスクを押さえてフィットさせるのも有効。着けっぱなしでいるとずれて隙間もできるので、本当に重要な場面だけ着用するなど、メリハリをつけてマスクを使用すると良いでしょう

マスクのつけ方

 

なお、一度使用したマスクの表面は触らないようにという話も耳にしますが、気にしなくていいと西村さんは言います。

西村さん「いくつかの実験により、基本的にブロックしたウイルスがマスクの表面に付着したままとどまることはないとわかっています。ですから触っても問題ありません。また、一時的に外したマスクの保管場所も過敏になる必要はなく、バッグやポケットに入れておいて大丈夫です

普段から頻繁には使わなくても、ある時期になるとマスクが必要になるという人は多いはず。その時のために、正しい使い方・着け方を覚えておくと良いでしょう。

この記事の内容は2025年2月12日時点での情報です。