みなさんは一日にどのくらいスマートフォンやパソコンを触っていますか?筆者はというと、寝ている間以外ずっと触っているかも…と思うほどの依存ぶり。しかし、常に通知や情報に追われている状況に心が休まらず、密かに“デジタル疲れ”を感じていました。そんな日々から抜け出したくて試してみたのが、デジタルデトックス。今回は、群馬・福島・新潟・栃木の4県にまたがる尾瀬国立公園で、日帰りデジタルデトックスを体験してみることに。その様子をレポートでお届けします!
スマートフォンやパソコンから距離を置く「デジタルデトックス」とは?

デジタルデトックスとは、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器から一時的に離れ、心や体の疲れをリセットする過ごし方のこと。通知や情報に振り回される現代では、無意識のうちに脳が疲弊し、ストレスが蓄積していることも少なくありません。
たとえば「寝る前1時間はスマホを見ない」「週末は自然の中で過ごす」など、方法は人それぞれ。大切なのは、意識的に“デジタルと距離を置く時間”を持つことです。
デジタルの便利さに頼りすぎず、自分自身や自然と向き合う時間を持つことで、思考がクリアになったり、心が落ち着いたりといった効果も期待できます。
今回は、そんなデジタルデトックスを尾瀬国立公園で実践してみました!
尾瀬国立公園ってどんな場所?

群馬・福島・新潟・栃木の4県にまたがる尾瀬国立公園(以降、尾瀬)は、東京ドーム約7,900個分(37,222ヘクタール)もの広大な高層湿原。季節ごとに表情を変える自然に囲まれ、野鳥のさえずりや風の音、水の流れる音だけが響く静かな場所です。
尾瀬は標高が高いため、常に東京よりも気温が10℃ほど低く、夏場も日中の最高気温は25℃前後なのだとか! 都市部の猛暑を忘れて過ごせる、絶好の避暑地でもあります。
また、東京からのアクセスも良好。時期によっては、新幹線とバスを使って日帰りでも行き来できる手軽さも大きな魅力です。木道が整備されているため、ハイキング初心者でも安心して散策できます。
そんな尾瀬は、デジタルデトックスにもぴったりの場所。特に山間部では電波が届きにくいため、自然と“デジタルと距離を置く時間”が生まれる環境なのです。スマートフォンを使わないと決めたものの、ついクセでSNSにアクセスしてしまった…といったことが起こらないため、徹底したデジタルデトックスを体験できます。

ちなみに、この尾瀬の美しい自然を長年にわたって守り続けているのが東京電力です。1910年代、同社の前身が水力発電のために尾瀬の土地を取得しましたが、当時から「この自然を守るべきだ」という声も多く、その声に応える形で、東京電力はダムを建設せず、環境保全に注力することを選びました。
現在では尾瀬全体の約4割、特別保護地区の約7割を所有し、木道の整備や湿原の回復などの保護活動をグループ会社である東京電力リニューアブルパワーが担っています。企業としての社会的責任から、自然と共に歩む取り組みを続けているのです。
初心者でも安心のプランで、日帰りで尾瀬へ出発!
ここからはいよいよ実際のデジタルデトックス体験の様子をお届けしましょう。今回は尾瀬初心者でも気軽に楽しめるよう、ガイドさんおすすめの行程とコースで実践することに。東京から朝ゆっくりめの出発でも楽しめる、日帰りプランです。
【初心者向けの日帰り行程案(東京駅発)】
| 時間 | 行程 |
|---|---|
| 7:48 | 東京駅から上越新幹線に乗車 |
| 8:52 | 上毛高原駅に到着 |
| 9:30 | バスにて尾瀬戸倉へ移動(関越交通・鎌田線) |
| 11:16 | 尾瀬ネイチャーセンター 尾瀬ぷらり館に立ち寄り |
| 11:30 | 乗り合いバスにて尾瀬戸倉から鳩待峠へ移動 |
| 12:05 | ハイキングコース入り口到着 準備運動 |
| 12:10 | 鳩待峠から山ノ鼻へハイキング |
| 13:10 | 至仏山荘付近で昼食 |
| 13:40 | 研究見本園を見学 |
| 14:10 | 山ノ鼻から上田代へハイキング |
| 14:30 | 上田代から山ノ鼻へハイキング |
| 15:00 | 山ノ鼻から鳩待峠へハイキング |
| 16:30 | 乗り合いバスにて鳩待峠から尾瀬戸倉へ移動 |
| 17:15 | バスにて尾瀬戸倉から沼田駅へ移動 |
| 19:48 | 沼田駅からJR上越線と上越新幹線を乗り継ぎ、東京駅に帰着(21:52予定) |
※掲載の時刻は2025年7月現在のものです。時期や改正等により変更となる場合があります。
装備は運動靴かトレッキングシューズ、リュック、上下分かれた雨具等が必需品です。朝晩の冷え込みで木道が濡れて滑りやすくなるため、滑りにくいソールの靴を選ぶのがポイント。トイレはチップ制(100円)なので小銭の準備も忘れずに。飲み物や、エネルギー補給におやつもあると安心です。
尾瀬をもっと楽しむための“予習場所”に立ち寄り

まずは、東京駅7時台発の上越新幹線で上毛高原駅へ。そこからバスで尾瀬戸倉へ向かうと、「尾瀬ネイチャーセンター 尾瀬ぷらり館」があります。
ここは、尾瀬の動植物や地形、気候、そして自然保全の取り組みまでを展示でわかりやすく紹介している施設です。尾瀬に入る前に立ち寄ることで、ハイキングしながら見える景色や出会う植物への理解と感動がぐっと深まります!





尾瀬の入り口に到着。いよいよ大自然に包まれるデジタルデトックスをスタート!

尾瀬戸倉からバスで約35分、ついに尾瀬のハイキングコースの入り口がある鳩待峠に到着しました! このあたりから、スマートフォンの電波が徐々に届きにくくなってきました。日常から少しずつ切り離されていく感覚に、どこかホッとするような気持ちも。
取材時はあいにくの雨が降っており、準備してきた雨具の出番がさっそくやってきました。でも、雨の尾瀬もまたひと味違った表情を見せてくれるはず! 気持ちを切り替えて、5分ほど準備運動を行いコースの入り口へ向かいます。

看板から先が、長年守られてきた貴重な自然エリア。一歩足を踏み入れると、普段の生活とは全く違う世界が始まります。
この入り口に設置されているのが「種子落としマット」。靴底についた外来植物の種子を落とすためのマットで、ガイドさんいわく「尾瀬の生態系を守るための大切な仕組み」なのだそう。ひとつひとつの配慮が、この美しい自然を保護していることを実感します。

整備された歩道で安心! 鳩待峠から山ノ鼻へ
雨の中、いよいよハイキング開始です。鳩待峠から山ノ鼻までは歩いて約60分の下り道。始めは「ここが最も傾斜のきつい区間」だという石畳の階段が続き、普段あまり運動をしない筆者は早くもピンチ…! しかし、雨に濡れた石段は滑りやすいものの、整備された歩道のおかげで安心して歩けます。
歩きながら、ふと「そういえば、さっきから通知がまったくきていないな」と思いスマートフォンを確認してみると、すでに電波は圏外になっていました。いつもなら次々と届くはずのSNSの通知がないことに、最初は少し不思議な気持ちになったものの、その静けさがなんとも心地よく感じられました。

しばらく歩いていると、「TEPCO」の文字が刻まれた木道が現れました。

木道は自然への影響を抑えながら、人々が自然に触れることができるように、尾瀬のほぼ全域の湿原や山間部に敷いてあります。その距離、約65km。このうち約20kmを東京電力が管理し、10年前後で掛け替えを行っているそうです。

途中で見えてきたのがテンマ沢。ちょうどミズバショウの時期で、ガイドさんから「かつて小中学校の音楽の教科書にも掲載されていた『夏の思い出』という曲にも登場する、尾瀬を代表する花なんですよ」と教えてもらいました。


道中は鳥のさえずり(カッコウやウグイスがいました!)や、カエルの鳴き声が聞こえ、自然を満喫!
そんなふうに五感が自然に向いていくうちに、いつの間にかスマートフォンの存在をすっかり忘れていたことに気づきました。尾瀬では意識的にデジタルから距離を置こうとしていた筆者ですが、電波が届かず通知も一切こないため、自然とデジタル離れができていたのです。
普段は「仕事の急ぎの連絡かも」と反射的に緊張してしまう通知がないだけで、呼吸がゆっくり深くなるのを実感。絶えず何かに追われていた煩わしさから解放され、スイッチがゆるやかにオフになっていくのを感じました。

雨宿りもご褒美時間! 至仏山カフェでひと休み
鳩待峠から歩くこと60分、山ノ鼻に到着しました。ここには至仏山荘という食堂やロッジがあり、雨宿りも兼ねて休憩することにしました。

山荘の左横には、「エコキュート稼働中」の看板が。こちらの山荘では大気中の熱を利用して電気でお湯を沸かす給湯器「エコキュート」を導入しています。
少ないエネルギーで効率よくお湯をつくる仕組みで、通常のガス給湯器に比べて二酸化炭素の排出量が大幅に少ないのが特徴。尾瀬の自然環境を守りながら、登山者が快適に過ごせるように工夫されていることに感心しました…!

同エリア内には、オープンしたばかりのカフェ「Shibutsu」も。スイーツやドリンクが提供されているとのことで、ハイキングの疲れを癒すべく立ち寄ってみました。

メニューは元ケーキ屋さんだというきぬこさんの手づくり。クリームやソースに至るまでこだわってつくっているそう。そんなきぬこさんに、おすすめメニューを教えてもらったのでご紹介します!

ドリンクのいちおしは、自家製ジンジャーエール。生のショウガを使用した辛口と、よく煮込んだショウガを使用した甘口タイプがあるので、好みや気分に合わせてどうぞ!

スイーツのおすすめは、クレープとミルクレープ。生地はケーキ屋さんから仕入れ、クリームはホイップではなく生クリームを立ててつくっているというこだわりです。


クレープのやさしい甘さとジンジャーエールの爽やかな香りをじっくり味わって、心と体に元気をチャージできました。
季節ごとにお花のリレー。尾瀬の研究見本園で自然に癒される

休憩後は、山ノ鼻にある研究見本園を30分ほど散策。ここでは尾瀬に自生するさまざまな植物を観察でき、自然の多様性を間近で感じることができます。


「研究見本園」という名前だけあって、ここだけでなんと尾瀬に咲く8割の花を見ることができるそう! ただし、一堂に尾瀬の植物を鑑賞できるわけではなく、季節ごとに出会える花は違います。尾瀬ではこれを「お花のリレー」と呼んでいるそうで、天然の公園ならではの楽しみ方ですよね。





予定変更も…湿原の入口で尾瀬を満喫!
本来であれば山ノ鼻から上田代まで足を延ばし、広大な尾瀬ヶ原の景色を堪能する予定でした。しかし、雨が強くなってきたため、安全を考慮して今回は研究見本園での散策にとどめることに。無理をしないのも、自然と向き合う大切な姿勢です。
とはいえ、「せっかくなので…!」と、湿原が見渡せる尾瀬ヶ原の入り口までガイドさんが案内してくれました。
すると、背の高い木の棒で荷物を背負って歩いてくる人がこちらへ向かってきます。

「歩荷(ボッカ)さんだー!!!」

歩荷(ボッカ)さんとは、山小屋まで荷物を運ぶ仕事をしている方のこと。背中に「背負子(しょいこ)」と呼ばれる道具を背負い、山小屋の貴重な食料や生活用品を運んでいます。自動車や自転車が乗り入れできない尾瀬では欠かすことのできない、縁の下の力もちです。

名残惜しいけど帰路へ。最後まで自然を五感で堪能
尾瀬ヶ原の入り口を満喫し、帰路につきます。山ノ鼻から鳩待峠までは歩いて90分の上り道。行きとは違う角度から見る景色や、雨に濡れた林の香りを楽しみながら歩きます。

初夏の雪道や、深い雪に押しつぶされそうになって曲がった大木など、ただ歩いているだけなのに自然は飽きることがありません。


電波が届かない時間が続いていることにも、もうすっかり慣れました!

ゴールに向かうにつれ激しくなる雨風にも負けず、無事にゴール!
雨の中でのハイキングでしたが、それもまた尾瀬ならではの体験。普段なら雨を避けて室内で過ごすところですが、自然の中では雨も含めて受け入れる気持ちになれるから不思議です。

尾瀬での日帰りデジタルデトックスを終えて

スマートフォンの通知に反応したり、パソコンに長時間向き合ったりする毎日にストレスを感じていた筆者。そんな日常から距離を置こうと訪れた尾瀬での一日は、まさに“情報を遮断し、脳や体を休ませる”というデジタルデトックスを体感することができました!
尾瀬は東京から日帰りでもアクセスでき、これからの季節は涼しく過ごせる避暑地としてもぴったり。皆さんも“デジタル疲れ”を感じたときは、尾瀬を訪れてデジタルデトックスをしてみてはいかがでしょうか?
より深く楽しみたいなら宿泊もおすすめ!
今回は日帰りプランでしたが、尾瀬をより深く体験するなら宿泊もおすすめです。至仏山荘をはじめとする尾瀬内の山小屋では、夜になると一面に星空が広がる静寂の夜を楽しめます。
さらに早朝、天気が良ければ幸せを呼ぶ「白虹(しろにじ)」に出会えることも。虹が白く見える珍しい現象で、尾瀬の朝の澄んだ空気だからこそ楽しめる自然からの贈り物です。宿泊することで、日帰りでは味わえない尾瀬の魅力をより深く体験できるはずです。
「至仏山荘」の予約はこちら(東京電力パワーテクノロジー)
Web:https://www.tokyo-pt.co.jp/oze/
尾瀬とTEPCO
Web:https://www.tepco.co.jp/rp/oze/
この記事の内容は2025年7月17日時点での情報です。
