
飲み会帰りや夜更かしの末に、電気を消すのを忘れてそのまま寝落ち…そんなあるあるシチュエーションが、睡眠の質を下げ、肥満リスクを高めているかもしれません。「睡眠時の明かり」が身体に与える影響を、糖尿病の専門医である青木厚さんに聞きました。
寝るときの電気の明かりが、なぜ肥満リスクにつながるの?
私たちの身体は、24時間ずっと「自律神経」によってコントロールされています。糖尿病の専門医である青木厚さんによれば、自律神経は主に「交感神経」と「副交感神経」に分けられ、このふたつがバランスを調整しながら、呼吸や心拍を維持しているのとのこと。

そして睡眠時には「副交感神経」が優位に働くことで、身体を休ませ、回復させる状態に整えてくれるのだそうです。
ところが睡眠中に電気をつけっぱなしだと、後で詳しく解説するように、明かりが刺激となって自律神経の調整がうまくできなくなってしまうそう。具体的には、身体を活動的にする「交感神経」が優位となり、睡眠の質は低下し、体内のホルモンバランスも乱れてしまうといいます。
青木さん「睡眠の質が低い状態が続くと、食欲を増進させるホルモン『グレリン』が増加する一方で、満腹を感じさせるホルモン『レプチン』は減少すると言われています。さらに、脂肪燃焼と筋肉生成を促す成長ホルモンの分泌も低下。その結果、太りやすくなるのです1)」

ちなみにアメリカで行われた大規模な調査によれば、睡眠不足がグレリンを14.9%増加させ、レプチンを15.5%減少させるという結果も1)。寝不足の次の日、ついついジャンクな食べ物に手がのびてしまうのも、ホルモンバランスの影響だったのかもしれません。
どのくらいからNG?肥満リスクを高める明るさとは
では、睡眠の質を低下させ肥満リスクを高める「明るさ」とは、どの程度なのでしょうか。
青木さん「奈良県立医科大学の研究によると、就寝中の明かりが3ルクス以上の場合、肥満リスクが高まると推定されています2)。これがひとつの目安になるでしょう」
ルクスとは光で照らされた面の明るさを表す単位で、たとえばオフィスの照明は150〜300ルクス以上にする必要があるとされています3)。3ルクスは、4m先の人の顔の向きや姿勢がわかるものの、表情や性別は判然としない程度4)。ここから考えると、就寝時も常夜灯くらいの明かりは残しても問題ないと言えそうです。「真っ暗では寝られない」という人も安心ですね。

どうしてもうっかり寝落ちがやめられない…という人は、間接照明を使ったり、タイマーなどを利用して夕方以降は照明の強さを落としたりすることで、あらかじめ安眠の妨げとなる明かりを抑えておくのがおすすめです。
参考資料
2)大林賢史 他「日常生活の光曝露と肥満リスク:平城京コホートスタディ縦断分析」(2016)
3)厚生労働省「職場における労働衛生基準が 変わりました」
4)TOSHIBA「街路における歩行者照明のポイント」
【コラム】睡眠の質には「メラトニン」も重要。メラトニンを作る食べ物にも注目!
快眠のためには、「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンも重要です。メラトニンは暗くなると分泌がはじまり、スムーズな眠りを手助けする働きがあります。また強い抗酸化作用を持ち、美容と健康にも欠かせない物質なのです。
青木さん「このメラトニンのもとになるのが、“幸せホルモン”のセロトニンです 。そしてセロトニンは、アミノ酸の一種・トリプトファンから作られます5)。トリプトファンを含む食べ物を積極的に摂ることも、睡眠の質向上の一助となるでしょう。また、セロトニン合成を助けるビタミンB6と炭水化物もバランスよく摂取してくださいね」
参考資料
5)厚生労働省「メラトニン」
部屋の環境を整えて、睡眠の質向上!
「肥満は生活習慣病のリスクを高めます。加齢とともにメラトニンも減少して寝つきは悪くなりますし、健康のためにぜひ睡眠習慣を見直してみてください」と青木さん。いきいきとした毎日に快眠は不可欠です。“うっかり寝落ち”に気をつけて、明かりと上手につきあっていきましょう!
※この記事の内容は2025年11月13日時点での情報です。
