
寒い季節、「熱めのお風呂で温まってリラックスしよう」と思っている人も多いことでしょう。でも、ちょっと待った!その入浴法、本当にリラックスできていますか?入浴後のだるさ、寝つきの悪さ、翌日も疲れが取れない……そんな不調の背景には“お湯の温度”が関係しているかもしれません。熱いお風呂のリスクと最適な温度、そして寒い夜に心地よく温まるコツを、専門家に教えてもらいました。
なぜ“熱いお風呂”がだるさを招く?
熱いお風呂はドッと汗が出るので爽快感があって疲れが取れるように思われがち。しかし、実は体の中はリラックスとは真逆の状態になってしまっているといいます。
早坂さん「入浴温度が42℃以上になると、身体が活動モード(=交感神経が優位な状態)になるとされています1)。この状態になると心拍数や血圧が上がるため、寝つきが悪くなり、結果的に疲れが取れにくいという事態になるのです。ぐっすり眠って疲れを取るためには休息モード(副交感神経が優位な状態)にスイッチする必要があります。そのためには40℃程度でのぬるめ浴がおすすめです」

また42℃以上の熱めのお風呂だと、のぼせや熱中症、ヒートショックなどを引き起こす可能性もあるとのこと。そういった身体への影響もあるため、熱めのお風呂は避けたほうが良いそうです。
参考資料
1)日本温泉気候物理医学会2023年版『最新温泉医学』
今日から実践!基本のぬるめ浴レシピ
身体を休息モードにしてくれるというぬるめ浴。早坂さんによると、意識しておくと良いポイントが2つあると言います。
Point①:湯船には全身浴で10分浸かる
身体が温まると血管が拡張し、血流が促進されます(温熱作用)。これにより酸素や栄養が筋肉へ届きやすくなり、老廃物や疲労物質の排出が促進され、結果として疲労回復を手助けする可能性があるとされています。

早坂さん「ぬるめ浴で温熱作用を得るために、40℃程度で10分間の全身浴をおすすめします。この10分間で深部体温が0.5℃から1℃近く上昇し、身体の芯から温まることができるのです。半身浴でも温熱作用は得られますが、下半身しか温まらないため全身が温まるまでに時間がかかり、同じ効果を得るには約20分必要に。長時間の入浴はのぼせや疲労の原因になり得るので注意が必要です」
また、入浴剤を使うのもおすすめとのこと。特に炭酸系の入浴剤は、お湯に溶けた二酸化炭素が皮膚から吸収され、体内のCO2濃度を高めます。すると身体は酸素不足と感じて血管を拡張し、血流が促進され、身体が効率よく温まる作用が期待できると言います。
Point②:入浴時間は食事と就寝のタイミングから逆算
そして入浴するタイミングは、以下が理想とのこと。
・ 食後30分から1時間経った後
・ 就寝の90分から2時間前
すると、入浴後、体温がだんだん下がってくるころに自然と眠くなり、質の良い睡眠につながるそうです。

早坂さん「忙しくて寝る直前に入浴せざるを得ない場合は、お湯の温度を少し低めの38℃程度にするか短時間で済ませるなどして、汗をかくほど体を温めないようにしましょう。温まりすぎると体温が下がるまでに時間がかかり、寝つきが悪くなる可能性があります」
【コラム】シャワーだけの場合はどうすればいい?
シャワーだけで入浴する際も、ぬるめ浴と同じような効果を得る方法があります。浴槽に栓をして、くるぶしが浸るくらい(10cm程度)まで42~43℃の熱めのお湯を張り、その中に足を浸けて浴びるのがおすすめとのこと。足湯の効果で血液が全身を巡り、洗い場でシャワーを浴びるよりも体が温まるそうです。
入浴前後で身体を冷やさないようにご注意!
ぬるめ浴の基本がわかったところで、寒い季節の入浴で気をつけたほうがいいことも聞きました。
早坂さん「冬は、特にお風呂でヒートショックを起こしやすい季節。予防のため、浴室や脱衣所とリビングの温度差を5℃以内にすることが推奨されています。仮にリビングが25℃の場合は、浴室と脱衣所を事前に温めておいて、20℃程度に保つように心がけましょう」

早坂さん「脱衣所の場合には、小型のヒーターなどを置くのがおすすめです。そして浴室の場合は浴室暖房で温めるのが良いですが、設置されていないのであれば、お湯を張る際に浴槽の蓋を開けておくと、湯気によって浴室全体が温まります。入浴直前に1〜2分程度、シャワーで洗い場にお湯をかける方法もいいでしょう」
ただし、脱衣所で暖房器具を使用する際には、タオルなど燃えやすいものが多いため、火事には十分注意が必要とのことです。
お風呂から健康習慣を整えよう!
「入浴は単に汚れを落としたり身体を温めたりする行為なだけではなく、長期的に見れば健康効果も期待できるんですよ」と早坂さん。
65歳以上を対象にした研究では、毎日湯船に入る人は、週に0〜2回しか入らない人に比べて、3年後に要介護状態になるリスクが29%低下2)。別の研究では、毎日湯船に入る人は認知症になるリスクが26%低下3)、将来うつ病になるリスクも24%低下4)することがわかっているそうです。
ぬるめ浴を取り入れて、疲労を感じない毎日を。そして毎日の入浴で、心身の健康にもつなげていきましょう!
参考資料
2)Bathing Frequency and Onset of Functional Disability Among Japanese Older Adults: A Prospective 3-Year Cohort Study From the JAGES, Journal of Epidemiology, Vol. 29(2019), No. 12, pp. 451-456
3)Frequency of Bathtub Bathing and Developing Dementia in Community-Dwelling Older Adults in Japan: A 9-Year Follow-Up in JAGES Cohort Study, The Journal of Balneology, Climatology and Physical Medicine, Vol. 88, No. 2(2025), pp. 73-82
4)Association between Tub Bathing Frequency and Onset of Depression in Older Adults: A Six-Year Cohort Study from the JAGES Project, The Journal of Balneology, Climatology and Physical Medicine, Vol. 87, No. 2(2024), pp. 49-55
※この記事の内容は2025年11月13日時点での情報です。