高温多湿な時期に欠かせないのが、エアコンの除湿と冷房。しかし、除湿と冷房を正しく使い分けている人は少ないのではないでしょうか。そこで、家電のプロおふたりに、エアコンの除湿と冷房の違いについて聞きました。
【驚愕の事実】エアコンは除湿より冷房のほうが除湿できる⁉
部屋の湿度を下げるにはエアコンの除湿モード、温度を下げるには冷房がよさそうですが、家電のプロたち曰く、一概にそうとは言い切れないという驚愕の事実が判明しました。その真意とは?
――湿度が高くジメジメしている日は不快ですよね。やっぱり、エアコンの除湿モードを上手に使うのが、快適に過ごすコツなのでしょうか?
中村剛さん「そうですね…とは言いにくいんです(笑)。 みなさん誤解されているんですけど、じつは除湿モードって、あんまり“除湿”できていない場合が多いんですよ」
――ええっ!? そうなんですか? それじゃあ、除湿モードの意味って…。
中村剛さん「と思いますよね(笑)。もちろん意味がないわけではないのですが、正しく上手にエアコンを使うために、まずは除湿そのものの機能を知っておきましょう」
そもそもエアコンの除湿ってどんな機能?
中村剛さん「“除湿”という言葉のとおり、部屋の湿度を下げる機能です。空気から水分を追い出して、サラサラにしてくれるのが除湿になります」
藤山哲人さん「じゃあ、どうやって空気から水分を追い出しているのかというと、エアコンの中で空気を冷やし、空気中の水分を結露させて排出しているんです。エアコンをつけると、外にある排水ホースから出てくる水がそれになります」
――あの水の正体は空気中の水分だったのですね。
中村剛さん「そうです。温度が高いと空気中に貯めこめる水分量が増え、温度が低いと貯めこめる水分量が減ります。つまり空気を冷やすと、今まで溶け込んでいた水分(水蒸気)が、溶けきれなくなって、水滴(水)となります。
温度をコップに置き換えて説明してみましょう。コップの容量を最大にしたときが30℃とすると、水をいっぱいまで入れた状態は湿度100%の状態です。空気が冷えてコップの容量(=温度)が半分になると、コップの半分の水が流れ出てしまいます。この水が結露した水で、エアコンのホースから出る水です。
お気づきのように、30℃で湿度100%と、20℃で湿度100%では、同じ容量の空気の中に貯められる水分量が違うということです。エアコンはこの原理を利用して除湿しています」
藤山哲人さん「部屋に氷と水の入ったコップを置くと、コップの表面に水滴がつきますよね。これは冷たいコップに触れた空気の温度が下がったため、空気中に溶けきれなくなった水分が結露水となって出てきているんです。エアコンの除湿はこの原理と同じです。コップの水は外気にふれて温度が上がってしまいますが、エアコンは冷たい状態を保つことで除湿しています」
じつは除湿と冷房は同じ仕組み
――なるほど。除湿は温度を下げることで湿度を下げているということですね。でも、それだと冷房も同じ…?
中村剛さん「いいところに気がつきましたね! そう、除湿は冷房と同じ空気を冷やす機能を使うのですが、室温は下がらないようにしているのです」
藤山哲人さん「温度を下げる仕組みもまったく同じです。基本的にエアコンには、空気を冷やす機能と暖める機能しかありません」
――同じ仕組みなのに、呼び方だけ変えているんですね。
藤山哲人さん「そうなりますね。ただ、上位モデルのエアコンだと、除湿に脱臭機能や除菌機能をつけているメーカーもあるので、まったく一緒ですとは言い切れません。あくまでも、除湿する仕組みはどこのメーカーも変わりません」
除湿より冷房のほうが、湿気が取れる理由
――いま、除湿と冷房の仕組みは同じというお話をしてもらったのですが、その事実から察するに…。
中村剛さん「そうです! 除湿と冷房は同じ仕組みではあるものの、空気を冷やすパワーが強いのは冷房です。温度が下がれば湿度も下がる、つまり冷房のほうが除湿よりも意外と“湿度を下げられる”となります」
――冒頭の“除湿モードは意外と除湿できていない”の意味が理解できました! なるほど。
藤山哲人さん「けっこう知らない人、多いですよね(笑)。除湿は寒いのは苦手だけど湿度は下げたいという人向けの機能なので、温度が下がりすぎないように調整されているんです。除湿は弱い冷房と考えるとわかりやすいかもしれませんね」
【結論】快適に過ごすにはエアコン機能の使い分けと+αが大切
――エアコンは除湿より冷房のほうが湿度は下がる…。ということは、湿気が高い日を快適に過ごすには、冷房を使うのが正解ということでしょうか。
藤山哲人さん「そうですね。高温多湿の熱帯夜みたいなときは、そうしたほうがいいでしょう。ただし、その日の気温によっては冷房だと寒く感じる人もいると思うので、その時々によって除湿と使い分けるのがいいと思いますよ。湿気も温度も思いっきり下げたいなら冷房、温度を保ちつつ湿気を取りたいなら除湿。というふうに、上手にコントロールできるといいですね」
――ちなみに、それぞれの設定温度は何℃にしておけばいいですか?
中村剛さん「じつは『設定温度を何℃にしたほうがいい』と明言することは難しいんです。快適に感じる温度や湿度は人によって違いますし、家の造りによってもエアコンの効きが違ってきます」
藤山哲人さん「結局、その家で自分が快適に感じる温度を見つける、という方法がいいかもしれませんね」
――最適温度は自分で探る…。エアコンは思った以上に、アナログなのですね。
中村剛さん「寒い暑いは、人によって感じ方が違うのでアナログにならざるを得ない部分はありますね。ただ、より快適に過ごすという意味では工夫できます。たとえば夏場を快適に過ごしたいなら、エアコンとサーキュレーターや扇風機を合わせて使うといいですよ。空気が拡散され、部屋の温度が一定になるので、過ごしやすくなります」
藤山哲人さん「あとは着るもので温度を調整することも大切ですよね。熱帯夜なんかは、風通しのいいパジャマや通気性のいい寝具を使うと快適に寝られます」
――エアコンだけに頼らないということですね。
中村剛さん「そう、快適な湿度・温度で過ごすには、エアコンに何かアイテムをプラスするのが大事です。省エネにもなるので、ぜひ取り入れてみてくださいね」
――なるほど! 今回、湿気には除湿よりも冷房が効くという、意外な事実がわかりました。エアコンを上手く使いこなして、快適なお家時間を過ごしたいと思います。ありがとうございました!
この記事の内容は2023年6月29日時点での情報です。