5日間でたまった疲労を集中ケアする方法

疲労は体による「休みなさい」という危険信号。しかし、休もうという意識があっても「疲れを取る方法がわからない」という方もいることでしょう。ゴールデンウイークなどの大型連休を利用して、疲労を正しく集中ケアする方法を疲労対策の専門医に教えてもらいました。

今回お話をうかがった方
中富康仁さん

ナカトミファティーグケアクリニック院長。大阪市立大学医学部第二内科・疲労クリニカルセンターで疲労外来を担当し、疲労研究の第一人者の渡辺恭良先生、倉恒弘彦先生らに師事。2014年4月、疲労について適切な相談ができる医療機関が必要と実感してナカトミファティーグケアクリニックを開院。

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なぜ週末に休んでも疲れが取れないのか?

そもそも疲労とは、睡眠不足・過労・人間関係の問題など、心身にかかった負担の蓄積によって生じた活動能力の低下のこと。自律神経の中枢がダメージを受けているため、「土日に少し多めに寝る程度ではなかなか疲れが取れない」と中富先生は言います。

中富先生「自律神経は脳が体を動かす際のアクセルとブレーキのようなものです。活動中に優位になる交感神経がアクセル、睡眠時などに優位になる副交感神経をブレーキと考えてください。

アクセルばかり踏んでいると体や心が消耗し、疲労感が出てくるため、体は『休みなさい』とブレーキをかけます。しかし、それを無視してアクセルを踏み続けているとブレーキが効かなくなる場合があります。これが疲労の蓄積時に起こる自律神経の変化です」

こうした疲れは少し休む程度ではなかなかケアすることができないため、大型連休は疲労の集中ケアを行う絶好の機会となります。

 

疲労を集中ケアするための5日間プログラム

連休中の過ごし方のフェーズ

 

中富先生によると、蓄積した疲労を集中ケアするには、大きく分けて「休養する」「生活リズムを整える」という2つのフェーズがあると言います。各フェーズのポイントについて、それぞれ詳しく説明します。

 

【連休前半】休養のフェーズ

だらけている人

 

連休前半は「たくさん寝てゆっくり休養する」がテーマです。ただし、十分な睡眠を取るだけでなく、その結果「どれくらいの時間に起きられたか」をチェックするのがポイントだと言います。

 

8〜10時間寝て「睡眠負債」をしっかり解消する

本来必要な睡眠時間を8時間と考えた場合、いつも6時間しか寝ていない人は「2時間×平日5日間+利息」の睡眠負債がある状態となります。「休日にお昼まで寝ても疲れが取れない場合、睡眠負債が溜まっている可能性が高い」と中富先生は言います。

中富先生「だからこそ休養のフェーズでは『たくさん寝ること』が非常に重要です。次の日のことはまったく考えず、午後10時にはベッドに入って8時間から9時間、可能なら10時間は寝てください。このとき何時ごろに起きられたかをチェックするのがポイント。ゆっくり寝て朝8時から9時ごろに起きることができるようであれば、それが次の『生活リズムを整えるフェーズ』に移行する目安となります」

 

休むこと以外に何もしなくていい環境を作る

疲労は心身に負荷がかかった状態なので、ゆっくり休養するために家事や子育ては家族にお願いし、「休むこと以外に何も考えなくていい環境を作ることも重要」と中富先生は言います。

中富先生「休養のフェーズでは、何かをしなければいけない状況から解放されることが必要ですから、予定を入れず、できればスマホもあまり見ないようにしてください。一番いいのは、森林浴ができるような静かな保養地でゆっくり体を休めることです」

 

【連休中間〜後半】生活リズムを整えるフェーズ

リズムを整えるフェーズのイラスト

 

連休中間〜後半は「休養のフェーズ」から、早く寝て早く起きる「生活リズムを整えるフェーズ」へと移行していきます。中でも、中富先生によると「朝早く起きて太陽の光を浴びるというルーティンは、生活リズムを整える上で非常に重要」とのこと。また、朝・昼・晩と、決まった時間に食事をすることも大切です。

 

太陽光の刺激によって体内時計をリセットする

人間の体は睡眠中に回復系のホルモンが働きます。体が回復すると、活動の準備をするためのホルモンが増加していきます。部屋でゴロゴロする生活が続くと「体がだるい」と感じますが、それは回復系のホルモンが働く生活リズムが崩れているためだと言います。

中富先生「だから後半のフェーズでは生活リズムを整える必要があるのです。それにはなるべく早起きし、太陽の光を浴びることが大切。太陽の光を浴びると、その刺激が脳の松果体(しょうかたい)という器官に伝わり、体が目覚めて活動状態になります。太陽光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜に眠たくなるのです」

 

疲労の原因「酸化ストレス」を食事で軽減する

疲労は日々のダメージが睡眠や食事ではケアしきれず、どんどん蓄積されている状態です。そのため疲れには「1日3食の栄養バランスの取れた食事も必要です」と中富先生は言います。

中富先生「疲労の原因のひとつとして考えられるのが、活性酸素による酸化ストレスです。そのため、疲労ケアには睡眠とともにバランスのいい食事が欠かせません。特に、抗酸化力のある食材をバランスよく取り入れるのがいいでしょう。具体的には、イミダペプチドが取れる鶏の胸肉や、コエンザイムQ10が含まれる青魚、ビタミンを含む緑黄色野菜などの食材がおすすめ。自分で食事を作れない場合は、家族などにお願いするといいでしょう」

 

早く寝て早く起きる生活リズムを心がけよう!

このように疲労回復には、大型連休を使って集中ケアを行う方法が効果的です。しかし、もっと大切なのは普段からなるべく早寝を心がけ、7〜8時間程度の睡眠を取ること。このような生活リズムなら仕事のパフォーマンスも向上し、体力を保つことができます。仕事や子育てでむずかしい方もいるかもしれませんが、ぜひ実践してみてください。

この記事の内容は2024年4月18日時点での情報です。