5分でわかるハザードマップ。気象災害から身を守る

大雨や台風などの気象災害がもたらす川の氾濫や土砂災害。自分が住んでいる地域にはどのような危険が潜んでいるのでしょうか。もしもに備えてハザードマップを活用し、災害時の行動をイメージしてみましょう。
※:メイン画像はハザードマップポータルサイト」を加工して作成

ハザードマップは科学的根拠のある予言の書

「ハザードマップ」とは、自然災害による被害が想定される区域や避難場所・避難経路などの位置を色分けして示したマップです。自治体と専門家、地図の制作会社が協力し、地形・地盤の特徴、過去の災害履歴などをもとに制作したマップは、いわば科学的根拠のある予言の書のように信頼がおけるもの。

近年は気候変動により、雨の降り方も大きく変わってきています。ハザードマップは毎年最新のものに更新されているので、古いものをそのまま保管しておくのではなく、常に最新版を手元に用意しておくことが大切です。

ハザードマップは、災害の種類や被害の内容によって地域ごとにさまざまな種類が発行されています。

 

中でも、「洪水ハザードマップ」「土砂災害ハザードマップ」「内水氾濫ハザードマップ」「防災マップ(※)などは、ほとんどの市区町村で公開されています。これからの時期は、台風や大雨が増えるので、優先してこの4つのハザードマップをチェックしておくのがおすすめです。

※:避難所や公共施設を示した地図のこと。

 

台風・大雨に備えてハザードマップを使ってみる

 

ここからは3つのステップにそって、実際にハザードマップで自分が住んでいる地域のリスクを確認してみましょう。

 

STEP1.ハザードマップを入手する

そもそも手元にハザードマップがないという人もいることでしょう。自分の地域のハザードマップの入手方法は大きく2つあります。

 

方法①役所の窓口、自治体のWebサイトから入手する

1つ目が、お住まいの役所の窓口、もしくは自治体のWebサイトから入手する方法です。自治体の多くは毎年最新のマップを無料で配布しています。

ここで重要なのは、必ず紙のハザードマップを手元に置いておくということです。ハザードマップはWebサイト(後述)でも見ることができますが、災害発生時はアクセスが集中してネットが繋がらなかったり、停電してスマートフォンが使えなかったりすることもあります。万が一に備えて、紙で用意しておくのがおすすめです。

 

方法②Webサイト「重ねるハザードマップ」を使って検索

「ハザードマップポータルサイト」より引用

 

2つ目が、国土地理院の運営するWebサイト「重ねるハザードマップ」を確認する方法です。こちらのWebサイトでは、通常、紙のハザードマップでは災害種別ごとにしか見ることができない表示を1つのマップ上に重ねて閲覧することができます。

また、全国のマップを見ることができるので、自分の家の周りのマップはもちろん、ご実家や遠方の友人、知人が心配なときに使用するのもいいでしょう。

 

STEP 2.自宅が何色の場所にあるか確認

ハザードマップを入手したら、自分の家をマップ上で確認してみましょう。ここでは、台風や大雨のときに役立つ「洪水ハザードマップ」と「土砂災害ハザードマップ」の見方を解説します。


自宅の水没レベルがわかる「洪水ハザードマップ」

 

台風や大雨による洪水などに備える場合は、「洪水ハザードマップ」の色に注目してください。上の図のように、浸水の深さによって避難の方法が変わります。

ただし、被災が想定されていない地域でも確実に安全だと保証されているわけではありません。たとえば地下室に浸水し、水圧でドアが開かず逃げられなくなり溺れてしまうケースもあります。危険地域に該当しなくても雨量や被害状況に十分注意し、なるべく高層階へ避難しましょう。

 

土砂災害の注意が必要な区域がわかる「土砂災害ハザードマップ」

世田谷区「土砂災害ハザードマップ」より引用

 

また、併せて「土砂災害ハザードマップ」もチェックしてみましょう。土砂災害警戒区域は黄色、より危険な土砂災害特別警戒区域は赤色で示されています。

なお、山や崖の近くだけでなく、斜面を削って造成された新興住宅地や、都市部でも自然が残されているところなどは土砂災害特別警戒区域に該当している場合があります。

 

STEP3.避難ルートをチェック

最後にマップを確認する際は、自宅や最寄りの避難所だけでなく、避難する際に使用するルートも押さえておくのが大切です。その際、浸水危険地域や土砂災害の危険がある地域は避けて、遠回りでも安全にたどりつけるルートを確認するようにしましょう。

 

また、マップで色が塗られていなかったとしても安全だとは限りません。なぜなら、ハザードマップから読みとれない情報があるからです。たとえば、マンホールやアンダーパス(立体交差)、道路の段差など、かつて河川だった旧河道と呼ばれるところは、現在は少し窪んでいるため、大雨が降ると水がたまりやすくなっている場合があります。

まずは自分が住んでいる地域にどのような危険があるのかを知ることが大切です。ハザードマップを使って災害時の行動を事前に考えておくことが、非常時の適切な行動に繋がるはずです。


この記事の監修
草野かおるさん

イラストレーター/防災士。PTA、自治会を通じて16年に渡り防災勉強会や防災訓練などで、防災活動に関わったことを生かし、東日本大震災の数日後、ブログにて発信を始める。多くのアクセスを集め、2011年9月には初の書籍が発売に。著書に「おうち避難のためのマンガ防災図鑑」(飛鳥新社)など。

この記事の内容は2023年8月18日時点での情報です。