冬を暖かく迎えるために、住宅設備で確認すべき4つのこと


寒さが厳しくなるこの時期、冬を暖かく過ごすために衣類や寝具の入れ替えをしたり、暖房機器を出したりする人もいることでしょう。しかし、冬の準備で忘れがちなのが住宅設備の点検。住宅設備で確認すべきことを家電王・中村剛さんに聞きました。
※この記事は戸建て住宅を想定しています。

秋の終わりにこそ、住宅設備の点検を

 

電気代がかかる季節と聞くと、夏を思い浮かべる人のほうが多いかもしれません。たしかに今年の夏は過去最高を上まわる猛烈な暑さでした。ところが、家庭で使われる電気などのエネルギーは「夏より冬のほうが圧倒的に消費量が多い」と中村さんは言います。

中村剛さん「家庭のエネルギー消費の内訳は、冷房2.4%に対し、暖房26.3%、給湯28.7%と、熱需要が全体の5割以上を占めています1)。日本の夏は暑いので暑さ対策ばかり注目されがちですが、じつはエネルギーを使う時間は冬のほうがずっと長く、光熱費もかかります。だからこそ冬本番を迎える前に暖房機器などの住宅設備をきちんと点検する必要があるのです」


参考資料

1)資源エネルギー庁「令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)家庭部門のエネルギー消費の動向」 

 

 

①エアコンの不具合が起こらないか確認する

 

冬を暖かく過ごすために欠かせない住宅設備といえば、まずエアコンです。じつは、エアコンは暖房能力が非常に高く、ほかの暖房機器に比べて省エネ性能も優れています。1kWの電力を1時間使用した場合のコストは、赤外線ヒーターなどの電気ストーブが31.0円なのに対し、高性能エアコンはわずか4.0円にすぎません(※1)

逆に言えば、こうした効率のいいエアコンの不具合を放置したまま冬本番を迎えてしまうと、冬を暖かく快適に過ごせないばかりか、家計にも少なからず悪影響を及ぼすことになるわけです。

中村剛さん「各家庭のエアコンは真夏にフル稼働した影響で内部がホコリや菌で汚れがちです。 そのため、いまの時期にフィルターを掃除するなどして、エアコン内部をきれいにしておく必要があります。その上で、秋のうちに暖房を30分程度つけて試運転を行い、エアコンから異音や異臭などがしないかどうかをチェックしてください。そうすることで、ホコリや菌を取り除くことができ、エアコンの故障を未然に防ぐこともできます」


※1:電気代は31円/kWh(税込)で計算(全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価)

 

②自宅の床暖房の種類を事前に把握しておく

 

エアコンとともに冬本番に活躍するのが床暖房でしょう。床暖房は場所を取らずに足元から部屋全体をまんべんなく温めてくれるメリットがありますが、床下に隠れている上、冬しか使用しないため、メンテナンスを怠りがち。中村さんは「まずお住まいの床暖房がどんな種類かを把握することが大切です」と言います。

中村剛さん「ひと口に床暖房といっても、大きく分けて『電気式』と『温水式』の2種類があり、さらに電気式には電熱線式やPTCヒーター式、温水式にはガス式やヒートポンプ式などの種類があります。PTCヒーター式はシンプルなつくりなので簡単には故障しませんが、ヒートポンプ式は循環液が蒸発して足りなくなっていることがあります。事前に自宅の床暖房の種類を把握しておけば、不具合が起きたときに対応しやすく便利です」


【コラム】住宅設備が故障していたらどうすればいい?


エアコンや床暖房がちゃんと動くかどうかを確認した結果、なんらかの不具合が見つかる場合もあるかもしれません。その場合は「メーカーに連絡するのが一番安心です」と中村さん。メーカーには修理やメンテナンスサービスの窓口が必ずあるので、故障した場合はまずメーカーに連絡してみましょう。


また、TEPCOではエアコンや給湯器などが故障したときに利用できる修理サービスがあります。メーカー保証・延長保証が切れた後でも、月々200円から修理してもらえるので利用してみるのもいいでしょう。対象設備などサービスの詳細は当社ホームページをご確認ください。

 

 

 

③窓(ガラス+サッシ)の寒さ対策をする

 

冬を迎える前に窓の寒さ対策もしておかなければいけません。エアコンは「対流」といって、温められた空気が動くことで人に熱を伝えます。いくら自宅のエアコンが高性能でも、家の気密性や断熱性が低くければ熱が逃げてしまいます。暖房の熱が窓などの開口部から流出する割合は58%に達するそうです2)

中村剛さん「かといって、壁や天井を工事する断熱リフォームまでするとお金も手間もかかるので大変でしょう。比較的簡単にできるのは『窓リフォーム』です。ペアガラスにつけかえたり、内窓を追加したりするだけでも気密性や断熱性が大きく変わりますし、国や自治体の補助金を利用できる場合もあるのでおトクに寒さ対策が可能です」

もっと手軽に窓の寒さ対策をしたい場合は、厚手のカーテンに換えたり、窓にポリエチレン気泡緩衝材のプチプチを貼ったりする方法も。「電気代をスイッチを切るなどで一生懸命節約するより、家の気密性・断熱性を高めるほうが経済的にも効率がいい」と中村さんは言います。


参考資料

2)一般社団法人「日本建材・住宅設備産業協会」 

 

④家の中で寒くなりがちな場所をチェックする

 

体調を崩さずに冬を過ごすためにはヒートショック対策も重要です。ヒートショックは医学用語ではありませんが、一般的に「急激な温度変化で体がダメージを受けること」を指します。家の中の温度差が原因で健康問題を引き起こす可能性があるので、暖かい部屋から寒い場所に行くときは注意が必要とされています。

中村剛さん「ただ、洗面所やトイレなどの寒い場所にエアコンを設置するのは配管工事の関係からもなかなか難しい。そのように住宅設備だけでは寒さ対策をカバーしきれない場合は、赤外線ヒーターなどの電化製品を局所的に使う方法もあります」

暖房能力と省エネ性能の高いエアコンを導入し、家全体の気密性と断熱性を高め、その上で局所的にはプラスワンの暖房機器で寒さ対策する…。このようにバランスの取れた適材適所の組み合わせが「冬を暖かく過ごすためのポイント」なのです。

 

将来を見据えた暮らしやすい住まいへ整えていこう

寒くなってから住宅設備の不具合を見つけても、冬本番のハイシーズンは業者も忙しくなってすぐに対応してくれません。また、修理や工事が必要となる場合も、寒い時期に窓を開けっ放しにすることになるので大変です。だからこそ「暖房がいらない時期に住宅設備をチェックすることが大切」と中村さんは言います。

何か問題が起きてから間に合わせで対応していると、健康面でも経済面でも結局ところマイナスになりがちです。今年の冬だけを考えるのではなく、1年後や2年後、もっと先の将来を見据えて住宅設備を整え、快適な暮らしをおトクに実現しましょう。

 

今回お話をうかがった方
家電王:中村剛さん

東京電力エナジーパートナー株式会社勤務。
2002年『TVチャンピオン』のスーパー家電通選手権で優勝。現在は”家電王”として動画マガジン『くらしのラボ』を毎週配信している他、テレビや雑誌、新聞などのさまざまなメディアで暮らしに役立つ情報発信をしている。無類のネコ好き!

この記事の内容は2023年11月14日時点での情報です。