家で過ごす時間が長くなる冬は、空間をより居心地よくしたいもの。そこでおすすめなのが暖色を使ったインテリアです。じつは暖色を目にすることで、同じ温度の部屋でも、より暖かく感じることができるという研究結果もあります。今回は色彩心理学を使ったインテリアのコツをご紹介します。
室内の色づかいで、体感温度が変わる⁉
色彩が人間の心理や感情に及ぼす影響を研究する色彩心理学によれば、暖色や寒色という色の違いが、人間の体感温度に影響を与えるとされています1)。
体感温度とは、測定された気温とは異なり、人それぞれが感じる暑さや寒さを数値化したもののこと。湿度や風速といった条件により温度の感じかたは変わりますが、空間に使われている色も影響を与える要素のひとつだとされています。なかでも赤や黄色、オレンジなどの暖色は、実際に体感温度を上げることが実証されています。フィンランドやノルウェーなどの寒さが厳しい国に住む人たちが、暖色を使ったインテリアを好む傾向があるのも納得です。
そこで、暖色の効果を活用した体感温度が上がるインテリアを選ぶのコツを、カラースタイリストの田岡道子さんに教えてもらいました。
参考資料
インテリアの黄金バランスをベースに、暖色を取り入れる面積を考える
田岡さんによれば、部屋のカラーコーディネートを考える際には、色のバランスを図る指標である「ベースカラー・アソートカラー・アクセントカラー」を、まず意識することが重要だといいます。
田岡さん「ベースカラーとは、床や壁など家の中の大部分を占めるカラーのこと。そしてアソートカラーはソファやテーブルなどの家具類やカーテンなど、比較的大きめのインテリアのカラーを指します。最後のアクセントカラーはクッションなどの小物類のカラーです。
いわゆるセンスがよく見える部屋は、これら3つが『ベースカラー70%:アソートカラー25%:アクセントカラー5%』の割合で成り立っている状態とされています。これをインテリアの黄金比と呼びます。今回は、この割合をベースにして部屋の暖色の割合を考えてみました」
暖かな部屋に模様替えする際にはアソートカラーを意識
当然、比率が大きいベースカラーを変更するのが一番目に見える効果が高いですが、床や天井の色を変えるのは大変です。そこで田岡さんがおすすめするのは、次に部屋の面積を占める割合が大きいアソートカラーを赤や黄色、オレンジなどの暖色にすること、ソファカバーを変えたりラグを敷いたりすることで、簡単に部屋の印象を変えられるといいます。
田岡さん「特にラグは色の作用だけではなく、敷くことで床の冷たさが軽減されるという利点も。ウール素材や毛足の長いシャギータイプなら、暖かさも十分です」
初心者はアクセントカラーを変えるのがおすすめ
ラグやソファカバーなど、面積の大きな部分の色を変えるのはハードルが高いという方は、面積の小さいアクセントカラーを変更することからはじめてみましょう。もっとも気軽にできるのは、クッションカバーを変えることだと田岡さんはいいます。
田岡さん「クッションなどのアクセントカラーを変えるだけなら初心者の方でも試しやすいと思います。さらに赤やオレンジなどの派手な色が苦手という方は、ベージュやブラウンを使ったり、ダスティーカラーと呼ばれるくすんだ色を選んだりすれば、より暖色を取り入れやすくなりますよ」
田岡さんのアドバイスを受け、ソファカバー・クッションカバー・ラグに、暖色を取り入れたのがAFTERです。涼しい印象を受けるBEFOREと比べて、部屋全体が冬に相応しい温もりある雰囲気に変化しました。
照明を使って体感温度を上げることもできる!
さらに、体感温度を上げる手段として部屋の照明を変えるという方法もあります。
田岡さん「LED照明の色は『昼白色』『昼光色』『温白色』『電球色』の4つに分類することができます。『昼白色・昼光色』が寒色系、『温白色』『電球色』が暖色系といわれる光色です。
見た目からも想像できるように、温かみのある暖色系照明のほうが体感温度を上げる効果があります。実際、暖色系照明と寒色系照明の体感温度を比較した実験では、2℃の温度差があったという結果も出ています2)。
部屋のメインライトを暖色に変えると暗くなりすぎるという人は、スタンドライトや間接照明などの局部照明の色を変えるだけでも、居心地のいい空間を作ることができるでしょう」
参考資料
暖色をうまく取り入れて、寒い冬を乗り切ろう
部屋を暖かくしてくれるのは、単に暖房器具やカーペットなどのアイテムだけではありません。本格的に寒くなる前に、温かみのある色を使って、空間の冬支度を始めませんか。
この記事の内容は2023年11月14日時点での情報です。