酒好き医師に聞く!お酒の上手な付き合い方


忘年会にお正月…何かとお酒を飲む機会が増える年末年始は、つい飲み過ぎて二日酔いになりやすいもの。そんな悩みを予防・軽減してくれる効果的なお酒の飲み方や食べ合わせをご紹介します。

二日酔いは防ぐことができる?

画像:iStock.com/KrisCole

 

二日酔いの原因と症状はさまざま。原因や、人それぞれの体質、体調によって対処法は異なるため、完璧な二日酔い対策というものはありません

ただし、飲み方や食べ合わせなどを気を付けることで、二日酔いの症状をやわらげることは可能です。具体的な方法について、“酒好き医師”の浅部伸一さんに聞きました。

 

今回お話をうかがった方
浅部伸一さん

肝臓専門医。1990年、東京大学医学部卒業後、東京大学附属病院、虎の門病院消化器科などに勤務。国立がんセンター研究所、自治医科大学での勤務等を経て、アメリカ・サンディエゴのスクリプス研究所に肝炎免疫研究のため留学。帰国後、2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科に勤務。現在はメドペイス・ジャパン所属。

 

 

まず、典型的な二日酔いの原因のひとつは、翌日までアルコールが残ること。個人差はありますが、肝臓がアルコールを分解するのには時間がかかるので、飲み過ぎると翌朝まで残ってしまうことがあります。

アルコールが分解されずに残ってしまうと、朝起きても酔っぱらった感じが続いたり、アルコールの代謝によって発生する有害物質(アセトアルデヒド)の影響で、頭痛や胃のムカつき、胃が炎症を起こしたりすることも。さらにお酒には利尿作用があるので、脱水による不快な症状や体調不良も起こりがちです。

 

飲む前にやっておきたいこと

二日酔いの原因や症状はさまざまでも、アルコールの摂り過ぎ、つまり「飲み過ぎ」がすべての引き金となっているのは間違いありません。二日酔いになりたくなければ、いかに飲む量を抑えるか、総量を規制することが基本です。

浅部さん「お酒を飲み過ぎないようにするには、飲み始める前に少しおつまみを食べるのが効果的。すきっ腹だとアルコールの吸収が速くなり、どうしても摂取量が多くなってしまいます。唐揚げは小腹が満たされてちょうどよいですし、脂分が胃での滞在時間を長くしてくれるので、酔いが回るのを遅くし飲み過ぎを防ぐことができます

また、事前の二日酔い対策としてウコン系のドリンクを飲む人もいると思います。浅部さんによると、ウコンには炎症を抑える効果があるため、胃炎などに効果は期待できますが、アルコールの分解を早めるものではないため医学的な効果は明らかになっていないそうです。

 

忘年会や飲み会に使える! 二日酔いになりにくい食べ合わせ

ここからは、実際のお酒の場で二日酔い対策に使えるお酒の飲み方をご紹介します。

まずひとつめに大切なのは、お酒を飲む順番。ウイスキーや焼酎といったアルコール度数の高いお酒から飲み始めると、一気に体内のアルコール量が増え、肝臓に負担がかかってしまいます。

浅部さん「アルコール度数の低いビールなどから始めて、酔い加減を確かめながら、少しずつ度数の高いお酒に変えていくのが望ましいでしょう。また、途中でお茶や水などノンアルコール飲料を挟むのも効果的です」

ふたつめが、食べ合わせです。前述したようにおつまみを食べながらお酒を飲むと、アルコールの吸収が抑えられるだけでなく、食べ物に含まれる栄養素によっては、肝臓がアルコールを分解する働きを助けてくれます

中でもアミノ酸やたんぱく質、ビタミンB群をたくさん含んでいる食べ物がおすすめ。代表的なお酒の種類ごとに、これらの栄養素を含んだぴったりのおつまみを浅部さんに紹介していただきました。

 

【日本酒・焼酎の場合】たんぱく質を含むお刺身類との相性が抜群

 

浅部さん「日本酒や焼酎と相性のよいお刺身は、たんぱく質の宝庫。特に、イカやタコは、アミノ酸も豊富です。アミノ酸は肝臓のアルコール分解を助けてくれますし、うまみ成分が含まれるので日本酒・焼酎によく合います。また、寒い年末年始には、熱々のおでんをつつきながらお酒を楽しみたいもの。おでんもたんぱく質が豊富ですが、塩分が多いので食べ過ぎには注意しましょう」

 

【ビールの場合】枝豆などの定番のおつまみが効果的

 

浅部さん「ビールと言えば、枝豆を連想するかと思いますが、じつはこれは理にかなっています。枝豆には、メチオニンと呼ばれるアルコールを分解してくれる成分が含まれているほか、アルコール代謝を助けるビタミンB1なども含まれています。また、食物繊維や適度な脂肪分も含んでいるので、美容や健康のためにもおすすめです」

 

【ワインの場合】白身魚やチーズなどのたんぱく質と一緒に食べるのがおすすめ

 

浅部さん白身魚などを使ったカルパッチョは、たんぱく質がたっぷりと含まれ、腹持ちがよいので飲み過ぎ防止の効果も期待できそうです。同じくたんぱく質の多いチーズや、ビタミンB群が豊富な豚肉などもおすすめ」

 

【ウイスキーの場合】ナッツ類やチョコレートなどの甘味との組み合わせがベスト

 

浅部さん「たんぱく質をはじめ、豊富な栄養素を含むナッツ類はアルコール度数の高いウイスキーのおつまみにぴったり。ナッツ類に含まれる脂質が、アルコールの吸収のスピードを抑えてくれます。カロリーは高めですが、少量ならおすすめです。ウイスキーと一緒にチョコレートなどを食べる人もいますが、甘いものは飲酒による血糖値の低下を抑えてくれるので、飲んでいる後半に少し食べると飲んだあとに空腹を感じにくくなります。締めのラーメンなどの食べ過ぎを防いでくれるような役割も」

 

飲んだ後、二日酔いになってしまったら…

うっかり飲み過ぎて二日酔いになってしまったら、とりあえず水分をしっかり摂りましょう。水やお茶、スポーツドリンクなど、飲みやすい水分であれば何でも構いません。アミノ酸やたんぱく質がたっぷり含まれている味噌汁もおすすめです。

浅部さん「胃がムカムカするのなら、炎症の可能性があるのでウコン系のドリンクを飲むのもよいでしょう。血糖値が下がって調子が出なくなることもあるので、甘い食べ物を食べたり、ジュースを飲んでみたりするのもよい方法です。症状が強い時は、胃薬など薬を飲んでもかまいません」

 

自分に合ったお酒の飲み方をしよう

 

年末年始は宴席のムードにつられ、ついお酒のペースや量が進んでしまうもの。飲んだ量がわからなくなるほど酔ってしまわないように、自分に合ったペースで少しずつ飲むのが二日酔いを避けるためのポイントです。

せっかく飲むのなら、気持ちよく、でも、明日に残らないような飲み方を心掛けてみてはいかがでしょうか。

この記事の内容は2023年12月12日時点での情報です。