調理家電で実験!もっともおいしい焼き芋ができるのは?

 

最近では専門店まで登場するほど人気の「焼き芋」。あの甘さと食感を自宅で再現するために最適な調理家電は、いったいどれなのでしょうか? 電子レンジや炊飯器など、代表的な調理家電で実験してみました!

使用したサツマイモは人気の「べにはるか」

 

今回の実験で使用したサツマイモは、現在特に人気が高いという「べにはるか」です。一般社団法人さつまいもアンバサダー協会の橋本亜友樹さんによれば、サツマイモにもトレンドがあり、最近は「べにはるか」のように、ねっとりとした食感をもつ品種が人気とのこと。

なお、「べにはるか」は収穫後60日貯蔵することで甘さのピークを迎えるそうですが、今回は都合により収穫後1週間程度の、ピークよりも少し糖度が控えめな芋を使用しています。

なお、実験では加熱調理したものはすべて「焼き芋」と表現しています。

 

複数の調理家電で焼き芋の「甘さ」と「食感」を比較!

そんな「べにはるか」を、もっともおいしい焼き芋にするために最適な調理家電は、いったいどれなのでしょうか? テレビドラマ・映画『ガリレオ』シリーズの実験監修でもおなじみのNPO法人ガリレオ工房さんと一緒に調理実験を行いました。

今回の実験で使用したのは、家庭でよく使われている調理家電です。炊飯器での調理は、焼き芋らしさを増すためにトースターも併用しています。

ちなみに料理時間は電子レンジの10分が最短。もっとも時間がかかるのは、炊飯器とトースターの組み合わせで、合計105分となります。

 

ここで気になるのは、焼き芋の「おいしさ」の基準でしょう。今回の実験では、おいしさの基準を「甘さ(糖度)」と「食感(柔らかさ)」という2つのポイントで調査しています。

甘さについては糖度計を使い、調理前と調理後の糖度を比較(※1)。食感については専用の機器を使い、同じく調理前と調理後の柔らかさを、芋の中心部と皮付近の2カ所で比較しました。 また、参考までに各家電が調理に使った消費電力も調べています。

※1:焼き芋25gを水75mLで90秒間ミキサーで撹拌、ろ過し、糖度計で測定した数値を4倍にしたもの。
参考:小巻克巳氏『東北地域農林水産・食品ハイテク研究会』





 

気になる実験結果を発表!

それでは早速、実験の結果をご紹介しましょう。まずは、「甘さ」の基準となる糖度の比較からです。

そもそも、サツマイモは加熱をすることで甘みが増します。これは、加熱時にサツマイモに含まれるデンプンが酵素(β-アミラーゼ)によって麦芽糖(マルトース)に変化して糖度が上がるからです。果たして、どのくらい変化があったのでしょうか。

●調理方法による糖度の変化

 

糖度の値をみれば一目瞭然。炊飯器とトースターの組み合わせによる調理では、調理前のサツマイモに比べ16%も糖度をアップさせることができました。4位の電子レンジに比べ、糖度の上昇は2倍以上の結果になりました。

 

続いて「食感」の基準となる硬さの比較です。こちらは、中心部と皮付近の2カ所で測定を行いました。数値が小さいほど、焼き芋が柔らかく調理されたと考えることができます。

●調理方法による硬さの変化

 

ここでも、炊飯器とトースターの組み合わせが1位に。糖度と同様に、電子レンジに比べ倍以上食感が良くなっていることがわかります。

そして消費電力については、下記のような結果になりました。

●調理家電による消費電力の違い

 

こちらについては、電子レンジによる調理が、使用した電力が少ないという結果に。フライパンは、消費電力が比較的少ない一方で、糖度や硬さが上位になっていることを考えれば、かなりコストパフォーマンスが高いといえるかもしれません。

これらの数値をもとに、改めてランキング形式にそれぞれご紹介します。

 

1位:【炊飯器×トースター】時間と手間がかかるだけの価値あり!

 

実験の結果、甘さ(糖度)、食感(柔らかさ)ともに、もっともよいスコアを出したのは、炊飯器とトースターの組み合わせでした。

 

さつまいもアンバサダー協会の橋本さんによれば、甘くて食感の良い焼き芋を作るには「調理中のサツマイモの内部温度が65℃から75℃以下の状態を長くキープする(※2)」「水分を蒸発させる」ことがポイントだそうです。

つまり、低温で長時間調理できる炊飯器と、水分を飛ばすことができるトースターの組み合わせが、家庭でおいしい焼き芋をつくるために、最適な組み合わせとなるわけです。実際に食べてみても、外側はパリッと、内側はねっとりした理想的な食感を生み出していました。

※2:日本食品科学工学会誌『サツマイモを蒸した際のマルトース生成に及ぼす塊根のβ-アミラーゼ活性およびデンプン糊化温度の影響』

 

2位:【フライパン】実力は十分。水分の飛ばし方がポイント⁉

 

一方、糖度や食感のスコアは良かったものの、実際に食べてみると、少し残念な結果になったのが、フライパンです。

 

確かに甘さと柔らかさは十分なのですが、少し水っぽい食感になってしまいました。また、焼き芋というより「ふかし芋」に近い印象です。橋本さんによれば、最後にアルミホイルを外してから少し加熱すると良かったのでは? とのこと。調理時間を増やせば、もっとおいしい焼き芋ができたのかもしれません。

 

3位:【オーブンレンジ】設定温度と調理時間次第でさらにおいしく!

 

同様に、改善の余地がありそうだったのが、オーブンレンジによる調理です。

 

写真からもわかるように見た目は蜜が出ていて完璧なのですが、今回の実験では、炊飯器とトースターの組み合わせにはかないませんでした。

今回は200℃で60分という調理方法だったのですが、橋本さんのアドバイスによれば、設定温度を170~180℃まで下げて調理時間を90分に増やせば、さらにおいしくできるだろうとのこと。炊飯器とトースターの組み合わせに比べ、手間が少ないというメリットがあるため、ぜひリベンジしてみたいところです。

 

4位:【電子レンジ】時短調理と省エネを目指すなら

 

甘さと食感ともに、今回の実験では低いスコアとなってしまったのが、電子レンジによる調理。橋本さんによれば、電子レンジは一気に加熱されるため、サツマイモに含まれるデンプンが糖に変わる前に、酵素が働きを止めてしまったのでは、と言います。

 

食感についても、他の調理家電に比べ硬さにムラがあったのも気になるところ。電子レンジは電磁波によって中心部から温度を上昇させるため、皮の近くより中心部の方が柔らかい数値になったと推測できます。

ただし、電子レンジの調理時間の短さと消費電力の少なさは圧倒的な強みと言えるでしょう。

 

じっくり時間をかけて適正温度で加熱することがおいしさの秘訣

 

おいしい焼き芋を作るなら、時間をかけてじっくり加熱することがポイントだとわかりました。

炊飯器のようにじわじわと加熱をすることで、サツマイモに含まれるデンプンから糖ができる温度・65度以上、75度未満の時間を長くとることができ、それが甘さを引き出す秘訣だと言えそうです。

寒い冬に、おうちでじっくり調理して、甘くておいしい焼き芋を楽しんではいかがですか?

 

この記事の監修

橋本亜友樹さん

一般社団法人さつまいもアンバサダー協会 代表理事。さつまいもコンサルタント・さつまいもアンバサダーとして生産、商品開発、イベント企画などサツマイモに関する幅広い領域で支援活動や情報発信を行っている。また、茨城県にてさまざまな品種の栽培を実際に行いながら、サツマイモの栽培技術に関する研究を行っている。

 

この記事の実験監修
ガリレオ工房

教師を中心にジャーナリスト、研究者、学生などで構成する科学実験の研究・開発グループ。そのユニークで独創的なアイデアや方法は、各界で高い評価を受けている。雑誌・新聞などでの発表のほか、テレビの科学番組にも企画協力している。また、全国各地での実験教室やサイエンスショーも手がけている。

この記事の内容は2024年1月18日時点での情報です。