実は秋こそ要注意!その不調の原因、かくれ脱水かも?


「体がだるい」「疲れが取れない」といった不調に悩んでいませんか? それは、もしかしたら脱水が原因かも。夏だけではなく、秋も要注意な脱水症の見分け方や、脱水予防に効果的な水分補給のコツをお伝えします。

脱水は1年中引き起こる

脱水症とは、文字通り「体内の水分が失われる」状態のこと。体の中に十分な水分が蓄えられていないと、血液など体液の循環が悪くなり、疲れやすくなったり、体のあちこちが痛くなったりと不調があらわれます。

脱水症は大量に汗をかく夏のトラブルだと思われがちですが、じつは汗をかかなくなる秋もまた、「かくれ脱水」に注意が必要だと脱水症に詳しい医師の谷口英喜さんは言います。

 

体内の水分は、汗や尿だけでなく、呼吸や皮膚からの蒸発によってもどんどん失われています。1日に自然と失われる量は、体重×15mLといわれていて、この数字は1年中変わりません。

谷口さん「猛暑が過ぎて汗をかかなくなったからと言って、こまめな水分補給を怠ると気づかぬうちに脱水状態を引き起こす『かくれ脱水』になる可能性があります。季節にかかわらず、1年を通してしっかりと水分を摂るようにすることが大切なのです」

 

見逃してはいけない脱水のサイン

脱水症の厄介なところは、ほかの体調不良と違って、なかなか症状が見分けにくいことです。以下のような体調や見た目の兆候(サイン)があらわれたら、かくれ脱水に要注意です。

 

暑さが和らいで、体への負担が減っているはずなのに、「何となく疲れが取れにくい」「体がだるい」「仕事の集中力が低下している」と感じるのなら、「かくれ脱水」ではないかと疑ってみましょう。

また、食欲低下も「かくれ脱水」の疑いがあります。体内の水分不足によって、食物を分解するために分泌される消化液が減り、食欲を損なわせている可能性があるからです。

谷口さん「上記のような比較的軽めの体調不良も、脱水が原因の可能性があります。ほうっておくと体のどこかが痛み始めるといった不調があらわれるようになります。ほかの病気が原因であることも考えられますが、睡眠時に熟睡感が得られないことも、脱水症のサインではないかということも疑ってみてください」

 

また、体内に摂り込む水分のうち、約4割は筋肉に、約2割は皮下組織に蓄えられます。つまり、水分が少なくなると、皮下組織の水分が失われるので、肌のツヤや弾力が失われる原因にもなるわけです。
脱水のサインは目に見えないものが多いですが、肌の調子なら、セルフチェックで見分けることができるでしょう。

谷口さん「手の甲の皮膚をつまんだ後にすぐ戻らなくなったり、爪を押してから色がすぐ戻らなくなったりしたら、危険シグナル。これは脱水が進んでいる状態なので、速やかに水分補給をしてください」

 

正しい水分補給で脱水症を防ぐ

こまめに水分補給をすることが、脱水症にならないためのベストな方法ですが、日々の生活習慣をちょっと見直すだけでも、予防できます。日常で意識してほしいポイントをまとめました。

 

ポイント1.1日8回以上、約180mLずつ飲む

 

1回あたりの量は約180mL(コップ1杯程度)で構わないので、8回以上とこまめに分けて飲みましょう。1日の総量にすると約1.5Lですが、一気に飲む必要はありません。

谷口さん「1日の活動時間(睡眠時間を除く)が16時間だとすれば、約2時間に1杯のペースです。特に朝起きたときは、数時間も水を飲んでおらず乾ききっているので、必ず1杯は飲んでください。夜寝る前も同様です。少ない回数で大量の水分を摂っても、余分な水分は尿や汗となって出てしまうので効率的ではありません」

 

ポイント2.アルコール以外の水分なら飲みやすいものでOK

水やお茶、ジュースなど、どんな水分を摂ったらいいのかも気になるところですが、利尿作用が高いアルコール以外の水分であれば、基本的に何でもOKです。飲みやすい飲料のほうが水分補給は進むはずなので、好みにあわせて選んでください。

谷口さん「水の場合は硬水と軟水がありますが、こちらも飲みやすいほうで大丈夫です。水の温度も、好きな温度で飲んで構いませんが、冷たすぎたり暑すぎたりすると体がびっくりしてしまうので、体温に近い常温の水がおすすめです」

 

ポイント3.部屋の加湿をする

前述したように、皮膚や呼吸からも自然と水分が失われるため、乾燥する時期は、加湿器を使ったり、濡れタオルを部屋に干したりして、室内の湿度を高めることも大切。体の内側と外側、両方から乾きを守ることも脱水に効果的です。

 

ポイント4.生活動線に「給水ポイント」を取り入れる

こまめに水分補給をするために生活動線上に給水ポイントを設けるのもよいでしょう。そこで導入を検討したいのがウォーターサーバーです。
1台あれば災害時や停電時などのもしもの時の備えとして役立つものもあります。

 

 

水を摂る習慣を身につけよう

私たちの体の約6割を構成する水。少しでも水分が減少すると、体に不調があらわれるため、喉が乾いたと思う前に、意識的に水分を摂ることを習慣づけることが大切です。

谷口さん「脱水のサインとして、食欲低下があるとお伝えしましたが、秋に出回る栄養価の高い食べ物は、水分もたっぷり含んでいます。水分を摂るだけでなく、よく食べることも脱水症予防の観点では効果的。食欲の秋も楽しみながら、脱水にも気をつけてくださいね」

 

今回お話をうかがった方
谷口英喜さん

済生会横浜市東部病院患者支援センター長兼栄養部部長。医学博士。1991年福島県立医科大学医学部卒業後、横浜市立大学医学部麻酔科入局。同附属病院救命救急センター、集中治療室、神奈川県立がんセンター麻酔科などで勤務。 著書に『いのちを守る水分補給 熱中症・脱水症はこうして防ぐ』(評言社刊)など。

 

この記事の内容は2023年10月18日時点での情報です。