汗ばむ夏に気になる体臭。自分の体はどんなニオイ?

昨今、何かと話題になる「体臭」。特に例年の猛暑によって少し外に出るだけで汗だくになることもあり、自分や他人のニオイが気になることが増えたという人も多いかもしれません。そんな気になるニオイが発生する原因と抑えるためのコツを、皮膚ガス学を研究されている関根嘉香さんにうかがいました。

今回お話をうかがった方

関根嘉香さん

理学博士。1966年8月6日東京都世田谷区出身。1991年慶應義塾大学大学院理学研究科を修了後、日立化成工業株式会社への入社を経て、筑波開発研究所に勤務。1993年東海大学理学研究科にて理学博士号取得。2000年東海大学講師、2004年東海大学助教授、2011年同教授就任。著書に『皮膚ガスのはなし‐体臭は心と体のメッセージ』(朝倉書店)。

不快な体臭の原因となる「皮膚ガス」とは?

皮膚ガスの種類

 

そもそも、どうして「体臭」が発生するのでしょうか?関根さんは主な原因として、人間の体の表面から出るガス「皮膚ガス」が関係していると言います。

関根さん「皮膚ガスはオナラなどと同じく、人間の体内でつくり出される生体ガスの一種です。どんな人からも常に発生していて、自分で止めたりコントロールしたりできるものではありません。現時点で800種類以上の皮膚ガスがあることが確認されており、いわゆる“加齢臭”と呼ばれる『ノネナール』や、“中年男性臭”と呼ばれる『ジアセチル』など、それぞれ成分やニオイの感じ方が異なるんです」

 

じつは汗にはニオイがない?

皮膚ガス発生の仕組み

 

夏場、特に気になるのが汗をかいた後のニオイ。これも皮膚ガスが影響していると関根さんは言います。

関根さん「皮膚ガスは放散する経路によってニオイが異なってきます。大きく分けて『皮膚の表面反応由来』『汗腺由来』『血液由来』の3つがあり、特に汗に関係しているのは “表面反応”由来の皮膚ガス。肌の表面に汗が溜まると、皮膚の常在菌が汗のなかに含まれる乳酸を食べることで皮膚ガスが発生し、納豆のようなニオイがするのです。一般的に、汗からニオイを放っていると思われがちですが、じつは汗自体はニオイを発しておらず、それを放置することで表面反応由来の皮膚ガスが生成され、不快なニオイを感じるようになるわけです。

ちなみに、他の2つ(『汗腺由来』『血液由来』)は体内で作られた成分が汗や皮膚を通じて直接放散される皮膚ガスです。“汗腺”由来のものは汗に含まれる『酢酸』などの成分が原因で、発汗とともに発生する酸っぱいニオイが特徴の皮膚ガスです。“血液”由来のものはアルコールや喫煙、運動・ストレスなどの要因で作られた成分が血液を通して直接放散されます。このように皮膚ガスが発生する原因や仕組みはさまざまであるため、そのニオイが何に由来しているかによって対策も変わってきます」

 

ニオイの原因は日常にあり? 生活習慣を見直して体臭を抑える

ニオイ対策のイメージ

 

関根さんによれば、人間がニオイを発するのは普通のことで、むしろ「正しく体が作用している状態」であると言います。ただし、そのニオイが強くなりすぎてしまうと、周囲を不快な気持ちにさせてしまいかねません。では、ニオイを抑えるにはどうしたらいいのでしょうか?

関根さん「ニオイの原因によって対策法も変わってきますが、最も簡単にできるのは『汗をかいたら放置せず、こまめにからだを拭く』ことです。濡らしたハンカチやタオル、ウェットタイプの汗拭きシートなどを使うと、体温を下げてさらなる発汗を抑えられるため、ニオイケアにつながります。

また、日頃から“汗をかく習慣”をつけておくことも大事です。ずっとエアコンの効いた部屋にいて汗をかかない期間が長くなると、汗腺の機能が衰え血液に含まれる成分のろ過ができなくなるため、ひとたび外へ出た瞬間にベタベタする“濃い汗 ”が出て、やがて強いニオイになってしまいます。もちろん、熱中症対策でクーラーは欠かせませんが、たとえば朝風呂に入ったり、日差しの強くない時間帯にウォーキングをしたりするなど、日常的にサラサラとした汗をかく習慣を持っておくのがいいと思います。

他にも食べ物や睡眠など生活習慣でニオイは変わってきます。自分のニオイが気になる方は以下の表で『におう生活』をしていないかチェックしてみてください」

におう生活チェックリスト


 

体臭の強さは生まれつきの体質によって決まると思われがちですが、じつは体質よりも日々の生活習慣、体調などが大きく影響するため、本人次第で改善できる場合も多いと関根さんは言います。自分のニオイに異変を感じたら、まずは皮膚ガスの発生源をさぐり、その要因となる行動を見直してみるといいかもしれません。

この記事の内容は2024年8月14日時点での情報です。