【夏の雷対策】外出中に雷に遭遇したらどこに逃げるのが正解?

外出する際にチェックしておきたい天気ですが、夏の天気は急変が心配なところ。特に雷は身の危険も伴います。もし雷に遭遇したら、どんな行動を取れば良いのでしょうか。また人体だけでなく、雷の被害は電化製品にも及びます。今回は雷の専門家である小林文明さんに雷対策をうかがいました。

今回お話をうかがった方

小林文明さん

気象学者。北海道大学大学院理学研究科地球物理学専攻博士後期課程修了。防衛大学校地球科学科助手、同講師、同准教授を経て、防衛大学校地球海洋学科教授。専門は、メソ気象学、レーダー気象学、大気電気学、研究対象は積乱雲および積乱雲に伴う雨、風、雷。

ジグザグに進む雷はどこに落ちるかわからない!

雷が落ちる様子

 

毎年のように起きている雷の被害。稲光や雷鳴が近づいてくると心配になるものです。そもそも雷とはどういう現象なのでしょうか。小林さんは次のように話します。

小林さん積乱雲の中で雨や氷の粒がぶつかり合うと静電気が発生します。静電気が溜まり、発生した放電が雷です。雷の見た目がジグザグなのは、雷が進む先を探しながら流れるためです。大気はとても電気を通しにくく、雷は通りやすいポイントを探しつつ迷いながら進むためジグザグに見えます。そのためどこに落ちるか予測がつかず、積乱雲の下ならいつどこに落ちてもおかしくありません。稲光が見えたり、雷鳴が聞こえたりしたら、すぐ室内に避難するのが賢明と言えるでしょう」

 

雷の被害に遭わないためにすべきこととは?

雷対策イメージ

では、すぐ室内に入れない場合はどうでしょう。小林さんによると、雷の被害には3つのパターンがあると言います。

小林さん「雷の被害には、人に直接落ちる『直撃雷』、木などに落ちた雷が近くの人に移る『側撃雷』、地面を伝わって周囲の人に感電する『地電流』の3つのパターンがあります。

ひらけた場所にいる場合は直撃雷への注意が必要です。黒い雲が見えたり、雷鳴が聞こえたりしたら、早くその場を離れましょう。雷雨のときに木の下や林で雨宿りをするのは側撃雷の危険があるので避けましょう。近くに逃げ込める建物があればそこへ逃げ込みましょう。もしない場合は、車の中が安全です。また、避難が難しい場合は、電柱など背の高いものから4メートルほど離れた場所でしゃがみましょう。その際は『雷しゃがみ』をします。姿勢をなるべく低くして、足はそろえてつま先立ちに。地面と接する部分を少なくし、親指を耳の穴にあてて耳も保護しましょう」

雷しゃがみイメージ

 

雷しゃがみは頭を下げて姿勢を低くすることで雷が体に直接落ちるリスクを低くできます。足をそろえることで、片足から反対側の足へ体内を通って雷の電流が流れることを防ぎ、つま先立ちは地面との設置面積を小さくすることで、地電流のリスクが軽減します。また、耳を塞ぐことで、雷鳴による鼓膜へのダメージを小さくすることができます。どうしても逃げ場がない場合は雷しゃがみをして身を守りましょう。

では、いつまで雷しゃがみや避難をしていればいいのでしょうか。行動再開に関しては、おおよその目安があるようです。

小林さんスマホの気象情報を見て積乱雲の位置を確認しましょう。気象情報を見るのが難しければ、最後の雷から30分間雷がないことが一つの目安になります」

 

最近増えている「雷サージ」被害とは?

雷サージイメージ

 

雷が鳴ったら室内に避難することが望ましいですが、小林さんによれば、室内では電化製品が雷の被害にあう「雷サージ」にも注意が必要といいます。

小林さん雷サージは、近くに落ちた雷の電流が、電線などを伝わって室内に流れ込む現象です。これによってパソコンのデータが飛んだり、電化製品が壊れたりすることがあるのです。最近では電子機器が増え、家で仕事をする人も多いため雷サージの被害も増えています。雷サージが発生する範囲は、雷の落ちた場所からおよそ半径1㎞程度と言われています。

雷サージの対策は、電子機器や電化製品のコンセントを抜くこと。抜くことが難しいなら、雷サージ防止の電源タップもあり、強い電流に対して自動で遮断してくれます。ただし100%安全ではないので、落雷多発地域や自宅への落雷が予想されるときなどは、できればコンセントを抜きましょう。また、日頃からデータのバックアップをとっておくことも大切ですね」

小林さんによれば、「一度で良いので家族で対策を話し合うなど、日頃から雷だけでなく極端な天候に意識を向けてみることが大切」なのだそう。いざというときの行動や日頃の備えも考えておきたいところです。

この記事の内容は2024年8月14日時点での情報です。